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「紅の匂ひ」

平成2年「即位の礼」の際に、皇后陛下が着られた十二単の重ねです。紅色が濃から淡へ順々に重ねられた美しいグラデーションです。公家の女房装束の色重ねの中でもおめでたいときに多く着用された五衣です。
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「杜若」

深い緑の葉の重なりの上にわずかに赤味をおびた紫の花の咲く繊細な杜若の色合いを表現しています。
四月頃から着用され、その気候に合わせるように目に映える鮮やかな藍と緑が初夏をさわやかに彩ります。
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「皆紅の衣」

バラの花の色を表した色目です。
平安時代には邸内に植えてバラを鑑賞したことが「源氏物語」に記されています。
大正天皇「即位の礼」の際、貞明皇后がご着用された十二単の重ねでもあります。
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「萌黄の匂ひ」

萌え出た若葉の色のような冴えた黄味の緑で「若葉色」ともいいます。
濃淡を順々に重ね合わせており、祝い事に着用されます。
令和即位の際、女性皇族方がご着用された十二単の五衣にも用いられました。
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「薄花桜」

白い表地にほんのりと紅味を含んだ裏地を重ね、赤をかすかに透かして見せることで山桜の花色を表しています。
早春の木々が芽吹く前に、ひっそりと咲く上品な山桜の情景を表現しております。
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「紫の匂ひ」

紫の染が行われるようになるのは飛鳥時代で、以来それは優艶・高貴な色として憧憬されてきました。
平安時代になると濃い紫は禁色とされ、下級の者はその着用が禁じられたほどです。